【短編】吾が輩は、
...
会社で、嶌子は今までにないくらいミスをした。
コピーしろと言われた部数を間違えたり。
お茶を配ろうとしてひっくり返したり。
どれも小さなミスで致命的ではなかったが、史上最多だった。
「君、やる気あるのか?」
上司には叱られるし。
しかし、嶌子はそんなありがたいお説教もちっとも聞いていなかった。
何故なら…家には恭也が待っているからだ。
それを考えると、仕事など手につかない。
同僚に何か話しかけられても、内容が頭に入って来ず、曖昧に相槌だけ返すという有様。
今さらながら、自分はどれだけ恭也に振り回されているんだろう。
社会人になっても、恋愛ごとでトラブルを引き起こすなんて。