【短編】吾が輩は、
きっと、当の恭也は何も思っていないに違いないのに。



嶌子だけが浮かれている。



それを証拠に、家に帰っても恭也はたいして反応しないのだ。



ただ、顔を上げるだけ。



もう5日目なのだから、少しは打ち解けてくれるかと思ったのに。



十年も会っていないと、こうなるのだろうか。



物理的距離は近い。



だが、心は果てしなく遠い。



嬉しくも悲しい状況だ。



せめて、雑談だけでも交わしてくれれば嶌子も慰められるのだが、恭也はずっと沈黙を守る。



昨日も、そして今日もきっと、自分から進んで嶌子に関わろうとはしないのだ。










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