【短編】吾が輩は、
もう、社会人になったのに。



嶌子は自分を詰る。



こんなことしたら、余計に恭也に嫌われるのも分かっているのに。



我慢が利かず、結局は爆発してしまった。



前の彼氏とも、喧嘩はしたが、今回ほど嶌子が勝手だったことは今までない。



情けなすぎて涙が出てくる。



隣の部屋の恭也に聞かれるのが嫌で、声を殺して泣いた。



どれだけそうしてたんだろう。



カリカリという音が聞こえ、嶌子は顔を上げた。



どうやらそれは後ろから聞こえてくる。



振りかえると、襖がカタカタと動いている。



不審に思って近づくと、ガタッと音がして、隙間から猫の手が出てきた。



「きゃあっ!?」



しかもその手はガシャガシャと動いている。



その手の持ち主が誰かわかっていても、気味が悪い。



「何なの?」


「やかましい、さっさとこの忌々しい襖開けろ!」



あーくそ、と恭也は相当苛立っている。



「人間ならこんなの…。」



言いたいことはわかった。



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