【短編】吾が輩は、
恭也は慄いたように泣きだした嶌子を見ている。



「どうしてあんたはそんな平然としてるの!?
自分が死んだって、ニュースでやってるのよ?
もう、ソラの身体から出て行っても戻る身体ないのよ?」



わかってるよ、とそう言う声も落ち着いている。



「馬鹿!」



どうしてこういうときまで、この人は完璧な物分かりのいい男なんだろう。



少しくらい、悲しむ様子を見せてもいいのに、しゃんとして嶌子を見つめている。



「恭也…!」



相手が猫なのをいいことに、力任せに胸に抱く。



ここで恭也が動揺を見せた。



「おい。」


「いいでしょ!」



尻尾が揺れる。



濡れた鼻が、嶌子の頬に当たった。



「ゴメンな。」



恭也には珍しい謝罪の言葉。



それがさらに現実を証明させる言葉で、嶌子の涙を溢れさせた。



泣き続けた。



そんな嶌子を、鬱陶しがる様子もなく、恭也はただ黙って抱かれていた。



今までなら触れば耳を伏せて嫌がったのに。



「ゴメンな…。」



さっきとは対照的に、二人は静かに時間を過ごした。













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