【短編】吾が輩は、
嶌子は唇を尖らせた。



「あのね、あたし、ホントは中学の卒業式前には告白するつもりだったんだよ?
なのに、恭也がなかなか捕まらなくって、言うなってことかと思って諦めた。」



「もう、お前はドアホ決定な。」



ピシッと恭也の尻尾が嶌子の頬を叩く。



「恭也こそ。
いつからあたしのこと意識してた?」



むっとして、嶌子は話題を恭也に振った。



「初めて会った時。」


「嘘。
早いでしょ。」


「いやいや。
言っただろ、俺にあんなこと言う奴いなかったって。」



言ったけど。



まさかあんな瞬間がきっかけでなくとも。



「好きだなって思ったのは?」


「普通に話すようになってすぐだと思うけど?」



結局お前はいつだったんだよ、と訊かれて、嶌子は口ごもった。



「あんまり覚えてない。
気付いたら好きだった。
でも、恭也が小学校卒業する前からかな。」


「ぜってー俺のほうが早いぞ、好きになったの。」


「かもね。」



そんなに前から嶌子を気にかけてくれてたなんて、嬉しくて仕方がない。



「今、そんなカミングアウトしてくれなくても。
もっと前に、出来たら中学卒業する前に言ってくれればうれしかったのになぁ。」



そう言うと、恭也はムクッと上半身を起こして歯を剥いた。



「黙れ!
俺はそんなこと自分から言える奴じゃねんだよ。」


「チキン。」



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