【短編】吾が輩は、
「あ~あ、なんか怖いね。」


「何が?」


「今まで連絡の手段なかった初恋の人と再会したと思ったらその人死んで猫になって、っておとぎ話みたい。」



夢かもな。



恭也はそう呟いた。



嫌よ。



あたしは夢だなんて認めない。



これは現実。



あたしと恭也の思いが一緒だと確認できたのを夢で片付けたりしない。



「ねぇ。」



なんだか、無性に眠たくなってきた。



「あたし、嶌子って名前で呼ばれたかったし、恭也とキスしたかったんだ。
でも、それももう叶わないね。」



正面に見える猫の顔が歪んだ気がした。



「あたし、意地でも中学で告白しとけばよかった。
こんなに遠回りな恋愛成就ってなんだろね。」


「ホント、なんなんだろな。」


「恭也、いなくならないよね?」



返事は、なかった。



「…あのな、期限は一週間だったんだよ。
神様からの、贈り物だ。」



薄れゆく意識の中、そんな声が聞こえた気がした。



「幸せにな、嶌子。」



嶌子はその瞬間、確かに幸せだった。
















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