【短編】吾が輩は、
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次の朝。
嶌子は幸せな気分のまま、朝を迎えた。
目を開けると、恭也は昨夜の格好のまま、眠っている。
「おはよ、恭也。」
声をかけても、起きる気配がない。
ふむ、と息をつき、嶌子はベッドから起き出した。
今まで通り、自分の食パンと、恭也用のパンを焼く。
コーヒーを淹れて、テレビの前に陣取った。
と、スリスリと背中にすり寄ってくるもの。
「え、恭也?
どしたの?」
振りかえると、グレーの尻尾。
「おはよ。」
昨日のやり取りは忘れていない。
嶌子は少し照れながら声をかけた。
「パン、焼いたんだけど、もう食べる?」
それに答えたのは、恭也の声じゃなかった。
にゃーという、懐かしいソラの声。
嶌子は背中を何か冷たいものが走ったのを感じた。
「恭也…?」
また、猫が鳴いて嶌子を見上げる。
立ち上がったまま、下を見下ろす。