【短編】吾が輩は、
.....



次の朝。



嶌子は幸せな気分のまま、朝を迎えた。



目を開けると、恭也は昨夜の格好のまま、眠っている。



「おはよ、恭也。」



声をかけても、起きる気配がない。



ふむ、と息をつき、嶌子はベッドから起き出した。



今まで通り、自分の食パンと、恭也用のパンを焼く。



コーヒーを淹れて、テレビの前に陣取った。



と、スリスリと背中にすり寄ってくるもの。



「え、恭也?
どしたの?」



振りかえると、グレーの尻尾。



「おはよ。」



昨日のやり取りは忘れていない。



嶌子は少し照れながら声をかけた。



「パン、焼いたんだけど、もう食べる?」



それに答えたのは、恭也の声じゃなかった。



にゃーという、懐かしいソラの声。



嶌子は背中を何か冷たいものが走ったのを感じた。



「恭也…?」



また、猫が鳴いて嶌子を見上げる。



立ち上がったまま、下を見下ろす。





< 30 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop