【短編】吾が輩は、
嶌子は自分の志望校に合格した。



だが、期待は見事に打ち破られ、恭也はそこにはいなかった。



仕方がないと、割り切って、今までを過ごしてきた。



それなりに彼氏もいたし、その時は恭也を忘れたわけではなかったが彼が好きだった。



そうやって、10年強を過ごしてきたのに。



今、隣に恭也がいる。



…猫だけど。



猫が使っていたクッションでは嫌だと言いくさり、嶌子に用意させた新品の上で、恭也は優雅にテレビを見ている。



リモコンも手元に置き、好き放題だ。



まったく。



と言いながらも世話を焼く嶌子も嶌子だ。



「ねぇ、あたし明日仕事だよ?」



さっきからずっと沈黙だったので、声が少し尖っている。



10年ぶりの再会なのに、昨日から思い出話すらしていない。



恭也は気だるそうにこちらを振り向いた。



「だからどうしろって?
俺ここで待ってるしかないだろ。」


「…そうだけど。」



何よ、その言い方。



何だか恭也の言動がいちいち感に触る。



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