【短編】吾が輩は、
唇を噛んで俯いていると、真正面に猫の顔。



嶌子は驚いて、バネに弾かれたように勢いよく身体を起こした。



「何!?」


「怒ったか?」


「は?」


「怒ったか、お前?」



ヒゲがピクピクと動いている。



猫の顔だとあまり表情がわからない。



相手の様子がわからないので、嶌子はおずおずと頷いた。



「何でだ?」



唇がめくれ、細かい歯が顔を出した。



…怒ってる? 



「だって、恭也が素っ気ないんだもん。
もう少し話してくれてもいいでしょ。」


「俺は口下手なんだよ。」


「あたしの前でも?」



いつから嶌子の前でも無口になった?



昔、他の女の子より嶌子と多く話してくれたのに優越感を感じていた。



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