BabyLove
リスタート
「じゃあ、もう私は帰るけどがんばるのよ」
「わかってるって」
「あんたがこんな遠いとこ選ばなきゃ毎週来てあげるのに」
「いいよ、別に」
母さんが笑いながらそう言って、呆れたように笑う俺。母さんはまた、がんばるのよ、と言い残し、俺の部屋を去った。
「はぁ……」
高校卒業、大学入学と同時に、生まれてからずっと住んでいた街を出た。大学を決めるとき目についたのは、その街から遠く離れたところ。ちょっとやそっとのことで行き来できるような場所ではなかった。正直、そういう場所に行きたくて大学を選んだっていうのもちょっとある。両親はぶつぶつ文句を言いながらも駄目だとは一度も言わなかった。
とかくして俺は4月から大学から徒歩一時間、自転車ならば15分くらいの位置にあるアパートを借り、そこから学校へ通うことになった。
誰ひとりとして知り合いがいないこの街で、覚えるのは不安と4月独特の期待感だけだった。