BabyLove
「うまいな!」
「だろだろ?!俺結構気に入っててさー。ここでバイトしたいなって思ってんだ」
「それいいな!」
仲里が連れて行ってくれた店は地元の人が個人的にやってるハンバーガーの店だった。チェーン店の安っぽい感じじゃなくて、しっかりとしたボリュームがあっておいしい。店の雰囲気も洒落ていてよかった。
「あと一週間で入学式かー・・・」
「速水はまたバスケやる?」
「もちろん!仲里もやるだろ?」
「おう!でも受験で鈍ってるからなー、取り戻さないと」
談笑していると、俺が背を向けている入り口の扉が開いた音がする。その音に自然とつられて顔をあげた仲里が一瞬目を丸くした。
「?どうかした?」
「い、いや、」
「あれ?もしかして秀ちゃんじゃない?」
「へ?」 「は?」 「あ?」
速水秀悟。それが俺の名前で、小さいころはよくあることだけど秀ちゃんって呼ばれていた。今でも幼馴染の女子とか、呼ぶ奴は呼ぶ。でもそれは地元だけの話。ここは、俺の地元からそう簡単に来れるところじゃない。そんなところでいきなり「秀ちゃん」と呼ばれて、驚きと疑念で反射的に振り返る。
「・・・・っ、」
「しゅ、秀ちゃん・・・・?」
そこにいたのは、俺が高校3年間、避け続けてきた、幼馴染の森宮小夏と、その母親だった。