BabyLove
「秀ちゃん?!そうよね?!」
「は、はい」
「久しぶりじゃない!大学、合格したのね!おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
小学校からの付き合いの小夏の母親とは顔なじみだった。まだまだ若々しいおばさんは俺を見るなり近寄ってきて話しかけてきた。その後ろで苦笑している小夏を見て、仲里が話しかけた。
「森宮も同じ大学受けたよな?合格したんだ」
「うん。おかげさまで!仲里くんも秀ちゃんも合格したんだね!」
小学校からの付き合いといっても、小夏とは3年間、ほとんど言葉を交わしていない。今までなんだかんだで避け続けてきた小夏が、目の前で笑っていることに、俺は少なからず動揺した。
「こ、小夏と仲里は知り合い?」
「ああ。文系で同じ教科取ってたし、な?」
「うん」
「そ、そっか・・・・」
「森宮も今日引越し?」
「うん。も、って、仲里くんも?」
「いや、速水のほう」
そう言って仲里が俺を指差す。小夏が俺のほうを向き、目が合った。にっこりと笑う小夏に困惑した。
「ふたりとも、よろしくね!」
「おう!」
「あ、ああ」
知らなかった。小夏が、俺と同じ大学だってこと。
思いもしなかった。小夏が、まだ俺のことを秀ちゃん、って呼ぶなんて。
驚いた。小夏が、あんな風に俺に笑いかけること。