カウントダウン
〜第一章・出会い〜


「……なさい、起きなさいって!」

夢から現実に連れ戻す悪魔の囁きに目を覚ます。

重たい目蓋を開け上半身を起こす僕。


『……おはよ〜』

「もぅ!早く起きないと遅刻するわよ?」

呆れた顔の母さん。


そう。今日から高校生。
初日から遅刻は出来ない。


「ご飯は?」

『ん〜?パン』


母さんは僕の返事を聞きリビングへ向う。

まだ寝ている体を起こす。

着慣れない制服に着替えてリビングへ向う。



淹れたてのコーヒーの香り。
焼きたてのトーストの香り。
こんな朝が好きだ。



『あれ?綾姉は?ミルクとって』

「まだ寝てるわよ?何か用?」

『いや、別に。大学生は羨ましいなぁ』

食卓で母さんと他愛のない話をする。




食事後身嗜みを整え家を出る。


『いってきます』

「あっ!空忘れ物」

『えっ?朝飲んだから大丈夫だよ?』

「一応持って行きなさい」

そう言い母さんが胸ポケットに入る位の小瓶を渡してきた。

錠剤入りの小瓶。
僕はそいつを見つめる。


『まだまだこいつは手放せない……か』


苦笑いを浮かべ受け取り家を出る。


朝日に照らされ光沢を増す黒髪を靡かせ桜を見上げる。


秋月空。


これから何が起こるか不安と期待を胸に学校へむかう。


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