ねむねむおーじ<番外>
お母さんはニコニコ水原君の顔を眺めている。
『ふふ、本当イケメンねぇ』
娘が連れてきた男の子を何て目で見てるんだ、この人は……
『なっ!母さんが好きなのは俺だろう!?!?』
お父さんったら、お母さんも大好きなの。
2人がつきあいだしたのも、お父さんの熱烈ファイアー妄アタックしたからとか……
よく聞かされた。
家族が大好きなのは良い事なんだけど…
『母さん!そんな顔だけいいやつなんて!!』
むっ…!
良い事だけど周りが見えなくなるのは悪い事。
水原君は顔だけいいやつなんかじゃないもん。
『女の子の家に平気で転がりこんで……』
いつの間にかお父さんの口調はどんどん荒くなって
『どうせ琥珀とどうこうしようと思ってたんだろ』
ちょっと、………やだ。
やめてよ。
『全く…、何が勉強だ…。頭ん中で何考えてるか分からん』
『…琥珀、友達は女の子だけにして、コイツとはもう「喋んないで!!」
私は机を叩いて立ち上がり、コップの中のお茶がユラユラ揺れている。
『琥…珀…?』
「呼ばないで喋らないで!」
頭の中がドックンドックンと荒れて、発する言葉が見当たらない。
「………お父さんなんて大っ嫌い」
やっと出てきた言葉は小学生並みの喧嘩文句だった。
それでも私は精一杯で。
それだけを言い残して、家の外へ駆け出した。