ダメな僕のレクイエム
「だから無理だって…!」

「大丈夫だから!もう!」

ちかは嫌がる神谷の手を引いてデパートの中にあるゲームコーナーへ向かった。

「誰かに見つかったらどうすんだよ!」

「だから早く行ってさっと撮らなきゃ!ね!」

ちかは神谷の腕を掴んでいる手に力を込めた。

「分かったよ…、ワガママなやつだなあ」

神谷は少し観念した、といった顔でちかを見ると笑った。
ちかと神谷は早足でゲームコーナーに向かうと、そのコーナーの奥の方にあるプリクラの機械がならんだ一角に向かった

「どれがいい?センセ」

「分かるわけないだろ!お前が決めろよ。」

「そだね……じゃあこれ!!綺麗に写るんだよ!」

ちかはぐるっと機械を見回すと一台を指差し、神谷を引っ張って行った。
神谷は慣れない機械に興味はあるようで プリント機の仕切りの中に入ってもやたらとキョロキョロしていた。

「センセ行くよ!撮るよ」
ちかは素早くコインを入れるとポジションに立った

「え!どうすんだこれ?」
「ここ見るの!カメラ!」

プリント機が光る。モニターに二人が写し出された。

「だめじゃんセンセ!ちゃんとカメラカメラ!見て」
「あ ああ!分かったよ」
またプリント機が光る。
「いいじゃん!」

モニターに写し出された二人をみてちかははしゃいだ。

何ポーズか撮影して、ちかは素早く写真のデコレーションを始める

「へぇ…すごいな。こんなことまでできるんだ…」
「もう…何にも知らないんだなあ!いい大人のくせに」

ちかは感心している神谷を笑ってけなした。

「大人だからじゃなくて男だから知らないんだよ!」

神谷は少しムキになって答えた。

「センセ可愛い!」

ちかはそう言うと神谷の笑顔を愛しく思った。



神谷の笑顔がプリクラ写真に重なる…

アルバムの写真を見ながらちかは思った。

(あの時の先生の…准の笑顔を私は一生忘れない…)
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