ダメな僕のレクイエム
翌朝、ちかは学校に行く気にならなかった…


どんな顔をして神谷に会えばいいのか分からなかったのだ。


とりあえず体調が悪いフリをして、学校に連絡を母親に入れてもらった。

「大丈夫?ストレス?大事な時期だからね…」

母親は心配そうにしていた。


「大丈夫大丈夫。少し熱っぽくて体がダルいだけ。部屋で勉強するね」

そう言ってちかはさっさと自分の部屋に逃げ込んだ。

「無理しないで…」

ドアを閉める時に母親の声が聞こえた。




部屋に入るとちかはベッドに倒れ込んだ。

枕に顔を埋めて溜め息をつき、仰向けになってまた大きく溜め息をついた…


何をしていても、大好きなドラマを見ていても、食事をしていても、ショッピングモールで見た神谷と奥さんの姿が頭から離れなかった。

もう 何もする気が起こらず、ただひたすらぼーっとしていたかった…


食事も殆ど喉を通らず、とにかく一人でいたかった。


繰り返し 神谷と妻の姿が頭を流れては戻り 流れては戻り 何度も繰り返す…

何よりも 負けた と思った事が悲しかった…


私といるより 先生は楽しく笑っているんだろうか…


どうすればもっともっと 大人の女に…色っぽい女になるんだろう…


それに…あのハイヒール…

彼女の履いていたハイヒールでまるでちかは胸を踏みにじられたようだった…


どうすれば…


ちかはイライラした、焦りにもにた気持ちでいた…

(もっと…踏み出さないと…せめてあと一歩…、でないと…負けちゃう…)



ちかは自分の中で何かが確実に変わって行くのを感じた。



ちかはいてもたってもいられなくなると、身支度を整え、キッチンにいる母に声をかけた


「ママ ちょと出かけてくるよ」

「え! ちか調子は?大丈夫なの?休んでるのに出掛けるの?」

母は炊事の手を止めてちかの方へ慌て寄ってきた。

その母親を振り切るように

「行ってきまーす!」

と叫ぶとちかは玄関を飛び出した。



< 19 / 45 >

この作品をシェア

pagetop