ダメな僕のレクイエム
家を出ると ちかは近くのショッピングセンターに向かった。

昨日行った中心街とは比べ物にならないが、ここも映画館があったりして、様々なショップが出ている。

その中をちかが真っ直ぐに向かったのは靴屋だった。


ウィンドウを眺め、店の中のディスプレイされている靴を一つ一つ手に取る。


その中でちかが

(あ!)

と思った一足があった。

シルバーのハイヒール

(これだ!)

ちかはそれを大人への切符の様にドキドキしながらレジへ持っていった。

お金を支払うと店を出て早速店の前のベンチに腰をかけ 箱からヒールを取り出した。


タグがついたままの靴をドキドキしながら足に履かせてみた、ゆっくりと立ち上がる

(高い…)

ヒールの高さのせいか、気持ちのせいか…


まるで違う景色を見ているようだった。




ちかはそのヒールに履き替えると店を出て化粧品を売っている店に入った、そこで店員に少し話を聞きながら幾つかの化粧品を揃えた。

「良ければメイクして差し上げますよ」

スタッフの言葉に少し戸惑いながらもちかは笑って頷いた

イスに座り慣れた手つきでメイクを施されていく鏡の中の自分を見詰めていた。

「できましたよ。ほら、美人だから綺麗に映えますね」

スタッフが言った。


鏡の中の自分はまるで別人の様に思えた。

同じ学年にはもうとっくにメイクをしている子もいるが、ちかはまるでそういった事には無頓着だっただけに、初めてメイクしたその自分は生まれ変わったかのようだった…


ちかは少し浮かれた気分になり、嬉しくなった。

店を出るとちかはショッピングセンターでて街を歩き始めた。

ファーストフードの店が立ち並ぶ辺りを歩いていたとき

「ねぇ!」

と誰かがちかを呼び止めた。
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