ダメな僕のレクイエム

「淳史!!!!｣
「ちか!!!!｣

森田の両親とちかの母親は子供をみつけると口々に叫んで近づいてきた!

ちかは神谷からそっと離れると 母親を見つめた

母親はちかを抱き締めた
「大丈夫なの？あなた大丈夫なのね！？｣

ちかは黙って涙を流しながら頷いた。

森田の両親も駆け寄ってきて母親は息子の肩を掴んだ

「淳ちゃん!ケガは!？｣

身体を揺すりながら問いかける

「大丈夫だよ…。｣

間髪を入れずに父親が言った

「お前 この大事な時期に何をしてるんだ!？｣

「仕方ないだろ!俺たちのせいじゃない…｣

森田が少し口を尖らせた
「まあ、みなさん、とにかくお掛け下さい。｣

濱砂がソファーを手で示して促した。

頭を下げながらちかの母親がちかを座らせ、その隣に座った

向かい側に森田の家族が座り

立っていた平田が神谷に促されてちかの母親の隣に座った。

神谷と濱砂は、濱砂が引っ張ってきた事務用のイスに腰かけた。


「早速ですが事件の経緯をお話します…｣

そう切り出して、濱砂は淡々と事件の内容について語り始めた。


一同は神妙な面持ちで話を聞いていた。
途中、ちかの母親が肩を震わせ泣き出したのを横の平田が肩に手を当てて顔を見ながら気遣っていた。

森田淳史はそんな平田を見ながら
いつもは眼鏡を掛けた冷たい女性にしか見えないが、優しいもんだなあ…
なんてことを考えたりしていた。

森田は改めて向かいに座っているちかを見つめた。

大人びたワンピース、ネックレス、見慣れないメイクに不自然なハイヒール…


そしてそのちかが堪らず抱きついて泣き出した神谷准を見た

刑事の話を伏せ目がちに聞いている神谷の顔は男の森田が見ても整った美しいものだった。

そして何よりも、様々な経験を積んできた男のオーラを感じた…


（ちかと神谷が…）

ちかを密かに想い続けていた森田は嫌な予感を拭いされなかった。