ダメな僕のレクイエム
一通り話を終えると濱砂は少し息をついて全員を見回した。

神谷が初めて口を開いた

「刑事さん、この子たちの処分は…?」


濱砂は頭を掻きながら答えた その仕草はいかにもドラマに出てくる刑事の様だった

「帰って貰って良いですよ。」

「処分は保留ですか?」

神谷がまた心配そうに尋ねた。

「そうですね 青井ちかさんは明らかに被害者ですしね。彼女はむしろその精神的ショックが心配ですが…。

森田淳史君は暴力を振るったみたいですが…あくまで正当防衛の範囲ですし、何より連中が逃げていますからね、被害状況も解らないし…

また展開があればお知らせしますが、お呼びするとしても参考人と言う形になると思いますよ。」


「ありがとうございます」

森田の両親が頭を下げた。

同時にちかの母親と平田、神谷も深々と頭を下げた。


「ただ…」

濱砂が言葉を続けた

「青井さん、女子高生がそんな派手な恰好で、しかも学校のある時間に街をウロウロするのは感心しませんなあ…。

ご両親、先生共々、ご指導お願いしますよ。」


「申し訳ございません!」
ちかの母親が涙声で言って頭を下げた。

「指導不足でご迷惑お掛けしました。」

平田も深く頭を下げた。
「ま 辛いでしょうが幸い大事に至らなかった。でもいつも誰かが助けてくれる訳ではない。自分の身は自分で守らないと…
付き合う相手には十分気をつけて下さい」

そう言うと濱砂は立ち上がり

「お帰りになって結構ですよ。」

と言った

みんなも一斉に立ち上がり 深々と頭を下げた。



警察署の正面玄関を出たところでちかの母親は少し前を歩いていた森田の両親を追いかけると、前に回って深々と頭を下げた

「この度は娘を助けて下さり、ご迷惑までお掛けして、申し訳ございませんでした…!」


森田の父は少し厳しい表情をして答えた

「まあ 息子がやった事は間違ってはいませんから。しかしあまり変な事に巻き込まないで頂きたい。あいつは今 受験 ハンドボール 大切な時期にあるんです…。」

「どうして あんな格好で化粧なんかして…」

「幸子!もういい!」

言いかけた妻の言葉を夫が遮った。



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