ダメな僕のレクイエム

「え？｣

「普通さ、
『ナンパされちゃダメだよ!』
とか
『他の女の子に声かけちゃ嫌だよ』
とかあんだろ。｣

森田が呆れたように言った。

「え!？ ああ そうか…ごめん…｣

少しちかがテンション下がり気味に答えた。

「いや…別にいいんだけどね、あ…ネクタイこれにするよ｣


そう言って森田はネクタイを一本レジに持って行った。


レジで精算している森田の後ろ姿をちかはぼーっと眺めていた。


（嫉妬かぁ…）

ちかの心にはそういう感情は沸いては来なかった。



支払いを終えると二人は店を出て歩き始めた


「靴屋見たいんじゃない？｣

森田が尋ねた

「え、あ、ううん。いいの｣

ちかが首を横に振った。
「まあ行ってみよう。時間もあるし｣

森田はそう言うとエスカレーターで下り始めた。
ちかはその後をついて行った。


靴屋で森田は色々なパンプスやブーツ等を楽しそうに選んでは

「これどうだ？｣

などと聞いていた。
ちかはそれに対しただ笑顔で頷いていた。

突然森田が

「これ似合いそうだ!買ってやるよ｣

と白いローヒールのパンプスを持ってきた

「え!？いいよ…!｣

と言うちかの言葉を無視して

「今日は付き合ってもらったからな!プレゼントだ｣

と笑いながら森田はそれをレジに持って行った。
そんな森田をちかは遠くを見るように眺めていた。





その後森田とちかはショピングビルに別の階で繋がっている別棟のビルの最上階へ向かった。

35階立てのビルで その最上階に入っている幾つかのレストランからはどれも綺麗な夜景を見る事ができる。

森田は海側の夜景が見られるレストランに入った、ちかも後をついて入った。


「予約していた森田です｣
店に入ると彼はカウンターの店員にそう告げた

「いらっしゃいませ。森田様。ご案内いたします｣
物腰の丁寧な店員に導かれ、二人は暗く雰囲気のある店内の窓際の夜景が見える席に座った。