ダメな僕のレクイエム

「ちか…｣

「はい｣

急に改まった様子の森田に戸惑いながらちかは返事をした。

「もう7年になるよね｣

森田が思い起こす様に言った。

「そうだね…もうそんなだっけ…。いつも励ましてくれてありがとうね…｣

「うん、これからも励まして行くから!｣

「そう、ありがと｣

「だから…｣

と確認するように森田が言った

「ん？｣


森田がポケットに手を入れ小さな箱を取り出した。それの箱を開きながら


「だから ちか 結婚してくれ!｣



と言った。

箱の中には輝くダイヤの指輪があった

「え…｣

いつかはそんな日が来るんだろうか…なんて漠然と考えていたちかにとって、森田のプロポーズは正に突然だった

正直…何と答えていいのか分からなかった。

森田を好きな気持ちはあった でもそれは感謝の気持ちの延長のような気もした。
ひょっとしたらそれが好きと言う事なのかもしれない…




でも

森田にトキメキを感じた事はなかった…



「ダメか？｣


黙り込んだちかに森田は心配そうに尋ねた


「…｣

「きっと幸せにするから!｣

森田が力強く言った


少しの沈黙が二人の間にあった…



時の流れの速さが二人には違って感じられた

「…｣

「ちか…？｣





「ねぇ…｣

「何だ？｣

「私…あなたを困らせてばかりになるかも知れない…｣

「ちか…｣

森田が一瞬言葉を失った



「それでも いい？｣

ちかが呟くように言った

「え？｣

「それでも淳史は大丈夫？｣


森田の顔が明るくなった
「当たり前だろ!!!!きっと、きっと幸せにするから!｣


ちかは少しうつ向いて、目を閉じるた…

そして顔を上げて

「よろしくお願いします｣

と微笑んだ


ちかの言葉に森田は身体中の力が抜けた様に椅子にもたれ、手をを仰いで

「良かった…ちか…ありがとう｣

と言った

「ううん…こちらこそ、ありがとうね…｣

ちかが笑って見せた。

「じゃ!｣

と森田が照れながらはしゃいだように目の前の箱の指輪を取り出した


森田はちかの左手をとった。
ちかは指を伸ばした

その伸ばした薬指に指輪がはめられた…