ダメな僕のレクイエム
森田は立ち上がると店員に声をかけた

店員は頷くとピアニストに合図を送った

マイクが立てられ男性のシンガーがマイクの前に立った

「ちか、ちかの好きな歌をプレゼントするよ」

森田はそう言った

静かにピアノが曲を奏で シンガーが歌い始めた

「これは………」

ちかが呆然と目を見開いた

「『Smoke Gets In Your Eyes』だよ。ちか好きだろ」

森田が得意気に呆然としているちかに言った











「へぇ…何て曲?」

尋ねたちかに神谷はピアノを弾きながら答えた

「Smoke Gets In Your Eyes」

「英語の歌?どうゆう意味?」

「だからもっと英語、勉強しろって言ったろ」

神谷は笑ってちかを見た
「はーい」

「『煙が目にしみる』って曲だよ」

神谷はちかの頭を撫でた

「ふーん、いい歌だね…」

二人は目を合わせて微笑んだ…

夕陽の射す音楽室だった…





シンガーの曲を聞きながらちかは涙が溢れてくるのを止められなかった。

急に涙を溢したちかを見て森田が慌てた様に言った

「あ… えっ? ちか大丈夫?」

ちかは何も答えなかった

「ちか?大丈夫?感動したの?

ちか?

ねぇ?」


ちかは涙拭いながら言った

「大丈夫 ごめんなさい…」

「大丈夫?」

森田が顔を覗き込んだ

「うん大丈夫…ごめんなさい…



ごめんなさい…


ごめんね…淳史…」



ちかは椅子に崩れる様に泣いた。


歌が二人を包んでいた…
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