ダメな僕のレクイエム

「あらあ!彼氏のお迎え？良いわね｣

杉山はからからうように笑って言った

照れているちかをよそに
「いつもちかがお世話になっています 森田と申します｣

と森田が頭を下げた

「いいえ 杉山です いつもコキ使っていますから｣

杉山が笑いながら頭を下げた

「お手柔らかに、では失礼します｣

森田が再び会釈してちかも頭を下げた。森田が車のドアをあけたとき

「そうそう…青井さん｣

と杉山がちかを呼び止め

「あれからどう？神谷さんの様子は？｣

と聞いた…

ちかは一瞬ビクッとしたが、冷静を装い

「はい…一向に変化はありません…｣

と答えた

そう…と顔をしかめながら話す杉山とちかの会話を

森田はじっとちかを見つめながら聞いていた…





二人を乗せた車は病院を出てから暫く走っていた

森田はその間 ずっと正面を向いたまま無言だった

ちかは心配そうに森田の横顔を眺めていたが…

がまんしきれず 口を開こうとした その時 森田が先に口を開いた

「指輪 どうしたんだ｣

冷たい口調だった、ちかは ハッとなった 今朝ナース服のポケットに入れたまま 慌てて帰り支度をしたため忘れていたのだ!

「あ…これは…｣


ちかが説明しようとしたが

「神谷って!？｣

森田が隙を与えず聞いてきた

「……｣

「なぜ黙ってるんだ？｣

森田の言葉はキツい

「あいつか!？あの神谷か!？｣

「……うん……｣

ちかは下を向いた

「どうして黙ってた!｣？
「別に黙ってたわけじゃ…｣

「じゃ何だ!｣

「話すチャンスがなかっただけ…｣

「へぇ それで指輪も外したのか!？｣

「そんな…!違う…｣

ちかは森田を見た、森田は相変わらず正面を向いたままだ

「何が違うんだ!あいつに婚約指輪 見られたくなかったんだろ!｣

森田が怒鳴った

「違う!淳史 少し変よ!｣

「変なのはどっちだ!｣

森田がちかを見た 悲しい目をしていた

「ねぇ 淳史 聞いて｣

森田はちかを無視して車を走らせた