月の天使【短編】
図書館から帰ってくると、一番に彼女を探した
病院内をあちこち探し回って、やっと彼女を見つけた時には夕方になっていた
彼女は僕を見て「こんにちは」と言った
場所は、なんと僕の病室の前だった
「えっと、こんにちは…三日月だよね?」
「え…?」
彼女は何を言われたのか、分からない様子だった
「えっと…クロワッサンの形…」
「あ。…うん、正解」
そう言った彼女は口元に手を充てて笑った
「クロワッサン、食べてくれた?」
彼女に訊かれてハッとした
形の意味の事を考えていて、貰ったクロワッサンそのものの事を忘れていた
「あ…まだです…今から食べます…」
「えっと…じゃあ、お邪魔して良い?」
思いもしない言葉が耳に入り、僕は驚いた
「え?」
「病室、ここですよね?…ダメですか…淳くん…」
彼女は病室のネームプレートを指していた
「えっと…ダメじゃないです。どうぞ」
「…じゃあ、失礼します」
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