【完】UNBALANCE/チャラ男とお嬢
「私はね…
ピアノ続けたい。
続けなくちゃいけないと思う。
お父さんのためにも、お母さんのためにも…
親の思いを…私は大切にしたい。
湊太くんは…違うんだね」
「そうだな…そういう事なら違うな。
俺は、自分の事のためだけに子供の人生を決め付ける親は嫌いだ。
俺は絶対に継がない」
「お父さん…困るよ…
継いだ方がいい。
継がなきゃダメだよ」
湊太くんは、私から少し離れた。
「なんでそんなこと言うんだよ。
俺が会社を継いだら、
親の決めた奴と結婚するってことなんだぞ。
香澄とは…一緒にはなれない」
そうなんだ…
「そうだよね…うちは庶民だし、
貧乏だし…
片親だし
母親は自殺しているし…」
「もうやめろ!!!
そういう意味で言ったんじゃない!!!」
「そういうことでしょ?
わかってる。
私…わかってる。
うちの親がそうだから。
身分違いの恋で、育った環境の違う二人が結婚したって、
絶対にうまくいかないこと…
私には痛いほどわかる。
だからお母さん自殺したの…」
「そんなの俺と香澄にも当てはまるとは限らないだろ?
育った環境が違っても、
二人で、一緒にやって…」
「簡単に言わないで!!!
お母さんは死んだのよ!!!
両親が二人とも揃っている、お金持ちの湊太くんに、
何がわかるの!!!」