【完】UNBALANCE/チャラ男とお嬢
校舎の裏へと歩いていくと、
2階建てのピアノ科専用の、練習室がある。
防音の個室が並ぶ廊下を通り抜けて、
一番奥にあるホ−ルの重たい扉を開けた。
開けた瞬間、ピアノの音が外に漏れた。
昨日はこの時間、まだ誰も来てなかったのに…
クリスマスコンサートはピアノ科にとって、
代々、大切な行事として引き継がれていて、
トリを努める事が、ピアノ科生徒の憧れだった。
今年のトリは…3年生の織田春菜先輩。
美人だし勉強もトップだし、
生徒みんなの憧れだ。
練習していたのは、憧れの春菜先輩だった。
私は邪魔にならないように、
ホール内の1番後ろの椅子に座って春菜先輩の演奏を聞いていた。
ショパンの…別れの曲…
あれ…春菜先輩は、違う曲だったような……
曲の途中で……止まった。
春菜先輩………?
春菜先輩は手で口を押さえて、
泣き出した………