【完】UNBALANCE/チャラ男とお嬢
電車が動き出した。
さようなら…俺の駅……
掴まれた手をぎゅっと握り返して、
俺は香澄ちゃんの隣に
また座った。
「ごめんなさい…」
いや、俺は手を繋げてラッキーだけど。
「どこで降りんの?」
「次の次」
香澄ちゃんは下を向いたまま答えた。
「んじゃ−見送るよ。
俺、いつも1時間半早く電車乗ってっから。
見送っても余裕だし」
香澄ちゃんがギロッとこっちを向いた。
「なんで、そんな早く?」
香澄ちゃんの猫目はすげ−綺麗だ。
睨まれると、ゾクゾクする。
「なんでって…
香澄ちゃんに会いたいから」
言ってて超恥ずかしいんだけど。
「ありがとう…」
香澄ちゃんは猫目を細めて笑った。
本当に…綺麗な子だな…と思った。
大切にしよう…なんて
俺らしくないことを
心に誓った。