銀杏ララバイ

かおるは何となく心配になり
後悔も感じている。

こんな知らない場所を、
いくら体調が悪そうとは言え、

初対面の男の言葉を信じてこんな所まで来ている。

16歳と言っても、もっと幼い感じもするが、
それでも立派な男の、言葉だけを頼りにこんな所を歩いている。

大体こんな所でギナマは何をしていたのだろう。

いや、ギナマと言う名前だって日本人的ではない。

月明かりでも色が白かったから
白人とのハーフなのだろうか。

本当にこの辺りに住んでいるのだろうか。


かおるはギナマの左側に立って歩きながら、
後悔の念を強くして考えている。

このまま退き帰そうか、
何か起こる前に… 

今ならギナマの体調が悪そうだから、
追いかけられる心配は少ない。

と、最後には、
ギナマがまるで子供を狙う夜叉などのようにも考えてしまい、
体を硬くしていたかおるだ。

それならば、
孝史がつないでいるギナマの手を、離さなければならない。

その孝史はかおるの気持ちなどお構い無しに、
ギナマの右手を掴んで、

好きなサッカーの話を、
大して反応の無いギナマに聞かせている。

本当にこの一ヶ月は、
考えたくもないが… 

孝史は元々相手の反応など無くても、
自分の興味のある事を喋り捲る癖があった。

ギナマの反応など気にしていないようだ。

それどころか、
かおると自分の身の上に起こっている、
先の不安な話より、

何も知らないギナマに
好きな事を話すのが楽しいようだ。
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