銀杏ララバイ
この2人… どこかで見たことがある、
と思った瞬間、思い出したかおるだ。
確かこの2人は、本に出ていた北条政子と源実朝そっくりだ。
現代ではないから、
写真とそっくりと言う訳ではないが、
そう、闘っているのは、
歴史の本に載っていた政子と実朝と同じような様相をした男女だ。
しかし、政子と実朝は実の母と子の間柄だったのではないか。
何故闘うのだろう。
かおるは、ただ孝史の手を握ったまま、
息を殺して様子を見入っている。
まさかこれも亡霊…
あの鳶の実鳶は、ギナマが全てぶっ壊した、と言っていたが嘘だったのか。
あの話は、アレは夢で、
まだギナマのチャクラは有効で…
だからどうなるのか分からないが…
2人の闘っている光景を見ながら、
かおるは自分の頭がおかしくなったように感じて動揺している。
夢と現実の区別も付かずに、
弟まで巻き込んでこんなところへ来ている自分…
一体どうしちゃったのだろう。
それを説明する記憶が抜け落ちてしまったようだ。
そしてその空白を埋めるために、
こうして悪夢が現われている。
せっかく会えた父に危害が無いように、
その事を助けてもらおうと、
こうして藁にもすがる気持ちで来ているが…
やはりまともな事ではなかった。
震えを堪えるために必死にかおるの手を握っている孝史…
目の前の光景が自分と溶け合うような気分になり、
かおるも動けなかった。