銀杏ララバイ

そしてその内にもっと状態がはっきり現われてきた。


二本の刀が交わった時、
政子らしき女人が持っていた刀が、いきなり爆発でも起こしたような火花を、

まるで花火のように空高く吹き上げ、

それと同時に人影も火花となって消えていった。

政子が負けた… 

そう思っていたかおるの前に、実朝が立っていた。



「私はあなたではなくて… 」



かおるはさすがに怯えながら… 

会いたかったのはあなたではなくて実鳶だ、と言うつもりだった。


こんな光景に出くわすとは… 

どう考えても想定外だった。

孝史はただかおるの手を握り締め、余計な事は言うな、と言う様な顔をしているが、

実際は恐怖で声が出ないのかも知れない。



「かおる、私はギナマの父・実鳶だ。
驚かせてすまなかった。」



そんな二人をどう思っているのか、
実朝の風采をした男は、
かおると孝史を見てそう名乗った。

しかしかおるは、鳶になっていた実鳶とは会話したが人物像は知らなかった。



「でも… あなたは源実朝でしょう。
本に載っているのと同じだから分かります。」


「わが祖先は実朝の子、見かけは同じようでも仕方が無い。
今のは政子の亡霊だ。

やはりかなりの力を持っているらしく、

ギナマが消したはずなのにまだ執着している。

しかし気にする事はない。

幾たび現われようと、これからは私が使命とする。」


かおるは驚くしか無かったが、
こうして現われた、と言う事は信じるしかない。
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