銀杏ララバイ

大きなテーブルの向かい側で、
自分たちに柔らかい眼差しを向けているギナマ。

今までは何となく暗かったし、
16歳らしく身長が伸びているから気づかなかったが、

そのブルーがかった白目の澄んだ涼しげな瞳は、
まるで生まれたばかりの赤ん坊のよう。

そして陽に当たった事の無いような、
白くて陶器の人形のように肌理の細かい肌。

そう言えばヘアースタイルも、
5年前もこんな風に無造作に伸びていたかも知れない。

それにしては見かけよりずっと軽かった。

どこか病気なのだろうか。

こうして料理を作ってくれる人はいるらしいが、
いつも一人では食欲もわかないのかも知れない。

こんな大きな家で、本当に一人で暮らしているのだろうか。


そんな事を漠然と考えていたかおるは、
自分を見つめるギナマの視線と合い、
思わずドキッとした。

そして、自分たちの境遇を
いきなり思い出している。

自分たちは… 
縁もゆかりも無いこんな所に長居をしてはいけない。

夜も迫っているだろうから、
もうお暇してあそこに戻らなくては。

しかし孝史は… 
とても幸せそうな顔をして、
料理をパクついている。



「お姉ちゃん、すごく美味いよ。
早く食べてみなよ。
ギナマ、食べないのか。

いいなあ、毎日こんな美味いものが食べれて。
しっかり食べないと、作ってくれた人に申し訳ないだろ。」



孝史はすっかりその場に馴染んだような顔をして、

料理に手をつけていない二人に
いっぱしの事を言い

、口いっぱいに頬張っている。
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