銀杏ララバイ
「お姉ちゃん、今日は手をつないで眠ろうか。
眠っている間に
お姉ちゃんが狐にさらわれてもいけないから、
僕が守ってあげる。」
と、殊勝な事を言っていた孝史だったが、
布団に入るとすぐに
快い寝息を出して眠ってしまった。
長い一日、
それも緊張の伴った行動をした日だったから、
疲れもひとしおだった事だろう。
こうして風呂に入った後だから、
睡魔に襲われても当たり前だ。
かおるはそんな孝史を
愛おしそうな眼差しで見ていたが、
その内にかおるも眠りについていた。
高校生とは言え、
かおるも孝史と同じ条件だったのだから、
疲れが出ても当たり前だった。
そして翌朝、
自分たちの部屋からそう遠くないところにある
ダイニングへ行った2人は驚いた。
ダイニングルームの隣の座敷に大きなテレビが置かれ、
畳の部屋なのに大きなソファーまであった。
ダイニングの奥には台所が、
昔の映画に出ているような広い土間になっていて、
大きなかまどらしきものが見えた。
しかしその隣には、
こじんまりとしたシステムキッチンが作られていた。
土間にはいろいろな山菜を含め
野菜類が置かれ、
冷蔵庫にもたっぷりと食材が入っていた。
「すごいわ。ギナマ一人にこんなに食材を集めているなんて…
孝史、何が食べたい。
お姉ちゃん、何でも作ってあげる。」
「お姉ちゃん、大きなテレビだね。
映るのかなあ。
僕たちが見ても良いのかなあ。」
かおるは広い台所や沢山の食材に感動し、
孝史は座敷に置かれたテレビの大きさに感動している。
最近目にする薄型の大きなテレビだ。
「もちろん良いじゃあないの。
食事の後で見ましょう。
その後でお庭を散歩しましょうね。
大きな家だけど
庭もかなり広いみたいだから見てみたいわ。」
「いいよ。僕はおねえちゃんのボディガードだから、
どこへ行くのも一緒だよ。」