銀杏ララバイ
そんな2人が楽しそうに声を掛け合ってはしゃいでいる。
見ているだけで笑みが浮かんで来るが…
いきなりかおるは立ち上がって、
ただ見ているだけでは面白くない、とばかりに
2人のためにゴールキーパーをかって出ている。
サッカーは学校の体育の時間にしたことがあったし、
孝史がテレビを見ている時は、
ほとんど耳に入っていた。
それに運動神経は悪い方でもない。
やはり2人より3人の方が楽しかった。
3人は興奮したような声を出して庭を走り回った。
そして時々休憩して喉を潤し…
午後の数時間をボールけりで楽しんだ。
昨日の不安な時間とはうって変わった楽しさだ。
かおるも孝史も、
自分たちが行き場の無い、
家なし子、と言う事はすっかり消えていた。
楽しかった。
また明日やろう、とボールを持って孝史が室内へ向かった時だった。
側にいたギナマが、
いきなり川を跳び越して
洞穴の方へ走っている。
「お姉ちゃん、今のを見た。
ギナマ、この川を軽々と飛び越したよ。
それに走るのも早い。
あいつ、運動音痴かなあ、と思ったけど
すごい運動能力だ。」
「そうね。何があったのかしら。
洞穴の向こうに橋が架かっているから
私たちも行って見ましょう。」
「うん。」
2人が洞穴近くに着いた時には、
どこから出て来たのか、
数人の黒尽くめの男が刀を構えてギナマを襲っていた。
いや、どこにあったのかギナマも刀を構えて…
ギナマの方が男たちを襲っているように見える。
何が起こっているのかはわからなかったが、
とにかくギナマが一人で数人の男たちと
闘っているのは分かった。