銀杏ララバイ
さっきの人たちはどう見ても大人の男だった。
ギナマはとても強かったが、
遠目に見ても小さかった。
私たちより背の高いギナマがそうなのだから、
私たちなど何も出来ない。
それどころか足手まといになるだろう。
何が起こっているかはわからないが…
私は孝史のような考えにはならない。
孝史と一度話し合わなくてはならない。
私たちはいつも一緒、
と決めてこうして施設を出たのだ。
かおるの考えは孝史とは異なっていた。
「有難う。だけど何も心配は要らない。
奴らは君たちには何も出来ない。
それに今は話したくない。」
何故かギナマは、
それまでの厳しい表情から寂しそうな顔に変わり、
しかし孝史の質問に応えようとはしなかった。
「じゃあ、いつになったら話してくれるの。
僕、ずっとここにいる。
お姉ちゃん、いいでしょ。」
それは、いつもの聞き分けの良い孝史ではなかった。
ギナマの事を一途に案じているのか、
それほどにギナマに感情導入してしまったのだろうか。
いや、見ようによっては、
ギナマのような少年剣士ではないが、
何かに取り付かれたように
ギナマを守ろうとしている姿がうかがえた。
「孝史… 」
かおるはそんな弟の様子に驚きながら、
ギナマの存在を意識して何も言えなかった。
夕食も、いつの間に作ったのか、
3人がダイニングに入ると
テーブルの上に美味そうな料理が並んでいた。