銀杏ララバイ

今度こそ料理人に会えると期待していたかおるは、
から振りの心境だったが… 

それでもギナマは勿論、
孝史まで当然のような顔をして、

満足そうに頬張っていたから何も言わなかった。


夕食後、かおるは
孝史と2人っきりになる機会を窺っていたが、

何故か孝史はギナマの側から離れなかった。


しかしそれはギナマも好まなかったらしく、

2人を書庫に案内した。

テレビに飽きたなら読書も出きる、
と言う事を伝えたのだろう。


確かに広い書庫の中には
昔の書物から現代のものまで、

それどころか人気のあるアニメ本や
少年少女向けの雑誌まで並んでいた。

それはまるで、
かおるや孝史が気に入るように揃えられたような気配だった。

その不審な気持ちを、
かおるはギナマにぶつけた。



「何でもあるのね。
まるで私たちの為に… 」


「そうではないよ。
おばあさまが私の為に集めてくれた。

だけど私は興味が沸かない。

孝史やかおるが読んでくれたら
本たちが喜ぶ。」



ギナマの受け答えには心が籠もっていない、
と感じたのは自分だけだろうか。


どうもギナマには何か秘密がありそうだ。

そんな事を思いながら、
かおるはギナマを見ている。



「僕は気に入ったよ。
テレビばかり見ていては良くないから、
少し部屋へ持って行っておこうっと。

お姉ちゃんもそうしたら。

ここはギナマと一緒でないと入る気がしない。」


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