銀杏ララバイ

夢… 違う、はっきりと聞こえた。

あの音はかなりの大男だ。

明日、朝になってから庭の足跡を見てみよう。

足跡があれば夢ではない。

そう結論付けたかおるは、
持って来た水を飲むのも忘れて布団に戻った。

しかし気になってなかなか眠れなかった。



「私、昨日はよく眠れなかった。」



朝食を食べながらかおるは孝史に話している。



「ふーん、僕は眠れたよ。」


「熟睡していたわ。
私が起こしても眠っていたぐらい。」


「起こしたって、僕を。
何かあったの。」


「そうよ。私がトイレに起きた時、
誰かが庭を歩いていたの。

それも多分すごく大きい人よ。
重々しい足音がしていたわ。

でも廊下は雨戸が占めてあるから
すぐには覗けないでしょ。

それに一人じゃあ怖いから
孝史と一緒に覗ける場所を探そうと思って起こしたのだけど… 

その内に足音も無くなった。
でも誰かしら。 また泥棒かしら。

足音は一人だったと思うわ。
それに歩き方もゆっくりだった。

泥棒ならさっさと動くものでしょ。」


「そうだね。後で庭へ出てその足跡を見てみよう。
重そうだったのなら足跡も付いていると思う。」


「ええ、私もそう思っていたの。
後で行って見ましょうね。」



そう話したものの、
二人は心置きなく朝食を食べてから庭へ向かった。

ここに来て、
かおるの作る朝食は特別に美味く感じる。

食材がそれだけ良いのだろうか。

施設では、もっと食べたくても、
他の子供たちや寮母の目を気にして… 

気兼ねだった。


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