銀杏ララバイ

しかし今分かっている事は…
施設には戻りたくない。

こうしてここにいるだけで
孝史の表情が元に戻っている。
どうにかして2人で暮らせることを考えなくては。

高校をあきらめて、
アルバイトをしたぐらいでは
孝史と一緒には暮らせないかも知れない。

だけど、他人に言われるまま施設へ行ってしまったが、
それは自分たちにとって良い事ではない、と感じた。

それで考えた。

これから先のことは分からないが… 

とにかく母が残してくれた貯金がある内は
孝史といろいろな所を見てみよう、と決めた。

母子家庭の5年間、
いつも節約、節約でどこにも行かなかった。

いや、母にそんな時間も無かったのだ。

だけどそんなにして貯めたお金でも、
死んでしまったら仕方が無い。

まだ自分でも未成年、
孝史にいたっては小学生だ。

最低、中学を卒業するまでは、
いつかは施設に入らなくてはならないだろうが… 

とにかく2人でできる事をして、
いろいろ考えよう決めていた。

そして、孝史もかおるの気持ちに賛成した。

親がいない子供は施設に入るのが運命かも知れないが、
そんな現実だけではやっていけない。

たった2人だけの姉弟、
孝史は自分が守らなければ、
と言う気持ちが強いかおるだ。



「お姉ちゃん、あれを見て。
誰かが倒れているみたい。」



孝史が飲み終えた缶を捨てに行こうと立ち上がった時、

不審なものを発見したように

声を潜めてかおるに囁いた。

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