銀杏ララバイ

「でも、どうして結界を作るの。

あんな格好をした警備員なんて
役に立たないのでしょう。

こんな大きな家だから
泥棒が入るのは分からないでもないけど、

そう言う場合は、
やはり警察とか警備会社に頼むのではないの。
お金、あるのでしょ。」



ギナマの言葉を素直に受け入れている孝史。


しかし高校生になっているかおるの心は、
少し複雑で現実的だった。

警備をしていると言う鎧武者だって
あまりにも非現実的だ。
アレでは重過ぎて走れない。

かおるは、素直に信じられるような話が
もっと聞きたかった。



「うん… 確かにいくらかの宝はあると思う。

だけど… きっと話しても信じないと思うけど… 

あいつらが狙っているのは
この家に住んでいる源家の霊魂、

あいつらは代々源家に恨みを持っている怨霊、

だから今の警察などでは役に立たない。

結界は奴らの侵入を防ぐため。
あの鎧武者もそうだよ。

アレは侍所の子孫で、
何代か前にこの家に住み着いた者。

父はそう言う環境に耐えられなかったと思う。

母を失った私を連れて一度は戻ったが… 
それで私を連れて行こうとしたと思ったけど、

私は残ってしまった。」


「でも… 怨霊って魂の事でしょ。
私たちこの目で見たわよ。

ギナマが数人のサングラスを掛けた男たちと戦っているところを。

さっきはただ黒い影しか見えなかったけど… 
魂って姿など無いものでしょ。

おかしいじゃあない。」



と、かおるはまたもや当然とも言える言葉で、
ギナマの話に突っ込みを入れている。



「それは多分私が張った結界が薄れていたのだ。

その時点で気づくべきだったのだが… 
精神が集中していなかった。

昼間の奴らは普通の人間が多い。
サングラスをしていたのは陽の光に弱いと言う事。

普段は夜間に暗躍する。」

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