銀杏ララバイ
「そう。またアニメの話みたいに感じてきたわ。
じゃあ、あのサングラスの人たちは、
わかり易く言うと、
あの時は何しに来たの。
三人か四人はいたでしょ。
あんな時間にこの家の霊を狙って来たと言う訳。」
「いや… あいつらは洞穴を探っていたから、
狙いは、多分尼将軍・政子の形見とか、
いくらかの宝かも知れない。」
「ちょっと待って。
どうしてここに北条政子まで出て来るの。
彼女は頼朝の妻で
頼家や実朝たちの母親。
頼家の子供、公暁を可愛がっていた人よ。
実朝は公暁に暗殺されたのだから…
この家は実朝ゆかりの家なのでしょ。
それなのに政子の宝があるなんて
話がめちゃくちゃだわ。」
にわか知識で読んだ歴史書だが、
その事には自信があったかおるだ。
どうもギナマの話は歴史と違う。
元々、実朝に隠し子がいたという話も眉唾物のようだ。
「彼女は後世ではいろいろ言われているけど、
実際は孤児になった公暁を愛しんだり、
それこそ秘密裏に
実朝の遺児とその母をも見守り助けた。
ただ男を見る目が無かっただけ。
だから男たちに翻弄されて
あんな人間像を作られてしまった。
その中には自分が生んだ二人の息子たちもいたけどね。
この屋敷が建てられるに至っては
彼女の陰の援助が大きかった。
だから今でも、ここに彼女の魂も含めて、
彼女が持ち込んだ宝も眠っている。
他の場所に立派な墓があるけど、
彼女はここが好きだったようだ。
あの洞穴は彼女のお気に入り。
多分魂もあの辺りに居るのではないかなあ。」
そう言いながらギナマは、
かおるの反応を見るように顔を窺っている。
自分は祖母から聞いた話。
かおるは果たして、
信じるかどうか気がかりなのだろう。