銀杏ララバイ

「楽しいなあ。
こんな生き方があるって、
もっと早くに知りたかった。」



いつもより早くに遊びを切り上げたギナマが、
改めて声にしている。

なぜかその日のギナマは
疲れたような顔をしている。

途中から気になっていたかおるだったが、
あえて気づかない素振りをしていた。

ギナマの笑みは
本当に幸せな顔になっていたから、
途中で意識などさせたくは無かったからだ。



「ギナマ、どうかしたのか。
今日は気分が悪そうだ。」



孝史も同じ事を感じたらしく、
直接声にしている。



「うん… かおる、孝史、話がある。」



そう言うギナマの顔は… 

それまでの笑みを浮かべた顔は消え、

何故かすごく緊張しているように見える。



「何かあるのか。」



孝史は尋常ではないギナマの態度に、

顔を食い入るように見つめて、
ギナマの手にあるボールを受け取った。



「私は決めた。

もっと早くに決心していれば… 
やっと決心がついた。」



いつもの事だが、
2人はギナマの言葉に即座には理解できない。

自分の心を素直に伝えているのだろうが、

その前の話の背景が理解できていない2人には、

何を話しているのか分からない時が多い。

しかし今のギナマは最高に真剣なようだ。



「決心って、何を決心したの。」



ギナマの様子に、

ただならぬ気配を感じたかおるが
落ち着いて問いただした。
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