銀杏ララバイ
「うん… 私は今晩決着をつけようと決めた。
激しい状態になると思うが…
そうした方が良いと思う。
いずれにしてもこの屋敷は消滅する。
私はこの一週間、
2人の父親の行方を捜していた。
私に楽しみと言う感情を教えてくれたお礼だよ。」
全ては理解出来なかったが、
最後の、自分たちの父を捜してくれたような言葉だけが理解できた。
が、何故ここで、
行方の分からない父が出てくるのかが分からなかった。
しかし孝史は興奮した様子で
ギナマに詰め寄っている。
「父親って僕たちの父さんの事か。
無理だよ。役所の人も施設の人も探してくれたけど分からなかった。
だから… 」
だから嫌だけど施設に入らなくてはならなかった、
と孝史はギナマに言おうとした。
が…
「その人は江ノ島に居るよ。
古くて小さな宿だけど、
そこで暮らしている。
二人の想像とは異なるかもしれないが、
間違いなく君たちのお父さんだ。」
「本当か。いつの間に捜してくれたんだ。」
そのギナマの言葉に、
孝史は目を白黒させて驚き、
喜びを表している。
「前に話しただろう。
私には特別な力があるって。
体は部屋に居ても精神力というか魂だけで捜せる。」
と、ギナマはまた、
かおるには到底理解出来ないような言葉を、
はっきりとを真面目な顔をして言い、
孝史の心を納得させた。
「その人が本当に父さんなら嬉しいけど… 」
かおるも、いきなり父の事を言い出した
ギナマの真意は分からなかったが、
ここに来て思い出しもしなかった2人にとって、
とにかく捜してくれていたと言う
言葉だけでも嬉しかった。
父がいれば、
自分たちは施設で暮らすことはない。