銀杏ララバイ
「今晩亡霊たちが襲って来る。
私が宣戦布告をした。
ここの霊たちが迎え撃ち…
きっと激しい戦いになる。
今の世に怨霊とか亡霊などは無用の存在なのだろう。
私がここを守っているから奴らもここに来る。
私は気づいたのだ。
私の存在が彼らの行動を活発にしている。
だから今晩でけりをつける。」
ギナマは孝史の問いに応えるように、
一応、可能な限り
分かり易く説明している、つもりだろう。
「分かった。
ギナマの味方は鎧武者が何人いるのだ。」
そして、本当に理解出来たのか、
孝史は、大勢の戦いになるらしいと
味方の状況を尋ねている。
「鎧武者はあいつ一人だ。
どうしてそんな事を聞くのだ。
あいつは今でこそ好んでこの家にいるが、
この家が無くなれば本来の場所へ戻る。
皆そうだ。
だから決着をつけるべきなのだ。」
このあたりの意味がよく理解できないが、
とにかくこれから始まる戦いを想定して、
孝史は味方の状況を把握しようとしている。
かおるも、多分孝史ぐらいは言葉の上だけなら理解できたが、
それでもどうも納得出来なかった。
孝史とは心の持ち方が異なっているのだろう。
「味方が一人では不利じゃあないか。
やっぱり僕が加勢する。
あの時サッカーボールのシュート、
役に立っただろ。
いくつかここに集めておいて
ギナマが危なくなったらここから蹴ってやる。」
「私はいつも一人だ。
それがこの家の子として生まれた私の宿命だ。
心配は要らない。
孝史、朝になったら
かおると一緒に江ノ島へ行くのだ。
じゃあ、奴らの気配を感じるからもう行く。」
そう言ってギナマの姿は消えた。