銀杏ララバイ

孝史は急いでサッカーボール、
いや、足で蹴る事が出来そうなものを集め始めた。

必要ないように言われたが、
やはりギナマの事が心配だ。

たとえ鎧武者が居るとしても一人、

どのぐらい強いかは分からないが
心配な事に変わりは無い。


そんな事を思っていると、
すぐに庭を取り巻く空気が変わって来た。

夜だから暗くなった、
と言う言葉で言い表すだろうが、

実際は不気味な灰色や暗っぽい紫色、
そして赤みかかったオレンジ色のような空気に
不安定に変化している。

その内に池の近くの川辺で、
ギナマが侵入者たちと
刀を交えている姿が目に入って来た。

確かにギナマの動きを見る限り
加勢など必要なかった。

しかし何故か、
相手が刀を握ってギナマに襲い掛かっている事は分かるが、

その相手の姿がはっきりしない。

本当に霊魂なのだ。

ギナマが相手にしているのは
本物の霊魂たちだ。

だから影のようには見えるが、
はっきり顔立ちなどは分からない。

ただ黒い影が刀を振り上げて
ギナマに襲い掛かっているように見える。

ギナマの言葉に、
意味が少しは理解できた2人、

自分たちの目の前で繰り広げられている活劇が、

誰と誰が闘っているのかを考えると寒気がして来た。


いくらギナマが強くても、

いくらギナマにチャクラがあると言っても、

たった一人であんな霊魂を相手にするとは、
無謀過ぎる。


2人はそんな事を考え、
無意識に握った掌に汗を滲ませて応援している。

不可解な事は、

そんな事態の最中に、

2人に、朝になったら江の島へ行け、と言ったギナマの、

その言葉の真意が何を意味するものか
全く分からなかった。

そして今はそんな事よりも… 

2人の心は決まった。

< 69 / 146 >

この作品をシェア

pagetop