銀杏ララバイ
実鳶との話で、
心の整理が付いたかおるは、
そのまま安らかな気分を味わっているつもりだった。
ところが快い気持ちのかおるに、
風呂から戻って来た孝史の声が飛び込んで来た。
振り返れば呆れ顔の孝史がいて、
鳶人は既に布団に入っている。
そして孝史の窓を閉める音がしている。
「鳶がそこにいたのよ。」
かおるは眠気眼のような顔をして、
うつろな声を出している。
孝史は、かおるが寝ぼけているように感じたらしい。
「何言っているんだよ。
鳶の銀杏丸は裏庭で眠っているよ。
あいつ賢いから、
他の鳶たちや猫やカラスから魚の干物を守っているって。
裏庭には父さんが漁で釣ってきた小魚を干してあるんだよ。
朝の食事に出すんだって。
それを銀杏丸は番をしている。
今、鳶人と一緒に見て来た。
眠っていても侵入物には敏感らしい。
こいつ銀杏丸とすごく仲がいい、
今に僕もそうなるよ。」
え、今のは夢…
確かに鳶と、あの銀杏丸と話していたはずだが…
あの鳶は裏庭にいた…
まさか、今ここに居たのではないのか。
確かに、鳶になっているギナマの父・実鳶がここに居て、
話をしていた。
その時、何故か孝史に起こされた。
やはり夢を見ていたのだろうか。
それにしては、あまりにも納得出来た話だった。
分からない…
とにかく説明は出来ないが、
実鳶と話して納得出来た。
それで自分の気持ちも整理が付いたような気がしている。
明日は前向きに話をしよう。
かおるはそんな事を考えながら風呂を使った。