銀杏ララバイ
昨夜の鳶、ギナマの父・実鳶が望んだ事もこの事だった。
そう言えば初めの出会いもそうだった。
5年前のあの銀杏の木の周りで…
いきなり現われたギナマは、
歳の近いかおるではなく、
孝史の後を付くように遊んでいた。
一緒に転んだりしても楽しそうだった。
声を出して笑った事も初めてだと言っていた。
やはりこの二人は、
どんな状況下でも仲が良いのだ。
言葉以上に心が通じ合うのだろう。
かおるは言葉にはしなかったが、
そんな事を感じていた。
そして客が全てチェックアウトして、
風呂掃除の終えた父と話し合った二人。
既に結論は決まっていた。
四月になったら孝史は駅の近くにある小学校へ6年生として転入する。
かおるは… 迷っている。
このまま高校生として2年生からスタートしても、
その先が見えていない。
高校は電車通学しかない。
勉強は嫌いではないが…
忙しくしている宿の仕事を手伝いながら、
空いた時間に好きな本を読んで暮らしても良いのではないか、と思えている。
父は何も言わないが、
多恵さんは高校を続けるように言っている。
多分かおるは… 今は迷っているが、
すぐに結論を出すだろう。
そして鳶人も、
小学校への入学準備として、
小学校の近くにある保育園へ通う。
送り迎えは自転車で父、と決めた。
それでとにかく一度、
今のところ宿の予約が入っていない、
次週の火曜日を休みにして、
父と横浜へ行き、
いろいろな手続きをする事にした。