狂愛されし少女の夢現




「愛してる。フラン、誰よりも、愛してる」


そう言っては 何度も何度も、彼女と唇を重ねる。


「僕はずっと 待っていたんだ」



その言葉に、霞んでいく意識の中、ふと 頭の隅にあった小さな記憶の欠片が蘇る。


( 私はその紅い瞳 好きよ )


( 人間にそんな事を言われるなんてね )


( ? あなたは人間じゃないの? )


( さぁ、どうだろうね。 今は、秘密だよ )


( 今度会ったら 教えてくれるの? )


( 気分が向いたらね。 あぁでも、君の事は気に入ったよ )


( 嬉しい、ありがとう )



あの日出会った彼も、そう、彼のように 紅い瞳をしていて・・・・

けれどそれが吸血鬼だなんて、幼い私には知るはずもなかった。



「君が僕の物になるのを、ずっと、ずっと―――!」



もしかして この人はずっと独りぼっちだったのかもしれない。

何故か分からないけれど、そう思ってしまう。





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