狂愛されし少女の夢現



「嬉しい、って…言ったじゃないか」


今にも泣きそうな、その声に 彼女の心がまた、崩れ落ちていく。


あぁ、ずっと セシル様は私の事を待っていたんだ。

なのに私は、あの日の記憶を忘れてしまって、何事もなく 幸せに過ごしてきた。



『セシル様、セシル様』


もっと彼を求めようとしてしまうのは、どうして?



「愛してる、愛してるよ、フラン」


私は 誰よりも、セシル様から愛されている。

だって、彼の物だと象徴するかのように、彼の名前を 刻まれたんだもの。



『セ、シル 様』



縛られている腕が解(ほど)かれないせいか、代わりに少女は必死に 彼を見つめる。

それはとても 艶麗な表情で。




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