BOOKS
純花は、すぐに回れ右をし会計を済ませ、1度も振り返ることなく本屋を後にした。
本屋に行く時よりも少し高くなった太陽の光を受けるが、純香はうつむいたまま歩き続けた。
下唇を噛みしめ、目から溢れる涙を必死でこらえる。
誰もいない家に入り、自分の部屋に駆け込み、ベッドへと飛び込んだ。
そのとたん今までこらえていた涙が、せきを切ったかのように流れた。
純花は彼に恋人という存在がいたことに衝撃を受けた。
いや、恋人の存在ということまで思い至らなかったからこその衝撃だった。
純花はこの時、涙を流しながら初めて自分の気持ちに気づいた。
ずっと『アイドルに憧れる』そんな気持ちだと思っていた。
しかし、それは違っていた。
あの本屋での彼の姿を見て、純花は自分自身の本当の感情に気づいた。