BOOKS
期末テストも終わり、あとは夏休みを待つばかりになった7月中旬のこと。
純花は、いつものように本屋に来ていた。
毎日通っているせいで代り映えのしない新刊コーナーを眺めていた。
「こんばんは。」
その声に驚いて顔を上げると、この本屋の名前が書かれたエプロンをした男の人が立っていた。
「・・・こんばんは。」
純花にとっては当然のように見知った顔だった。
名札に“前田”と書かれている彼は、よく純花が話す店員だ。
その理由というのも、純花の通っている高校の司書が彼のお姉さんだからだ。
前田亮太。大学4年で地元の国立大学に通っている。
ここのアルバイトは大学入学と同時に始めたらしい。
純花が高校に入学して司書の前田さんと話すようになってから、亮太とも話すようになっていた。
「明日、あのシリーズの最新刊が入るからとり置きしておく?」
“あのシリーズ”とは純花が3年くらい読み続けているシリーズである。
「明日、発売なんですか?
じゃあお願いします。この時間になるともしかしたらないかもしれないですよね。」
最近コミック化され、もうすぐドラマ化されると噂になりだしたとたん読者数が増えて、原作小説を入手するのが難しくなってきたのだ。
「そうなんだよね。
じゃあ了解しました。」
亮太はそういってカウンターの方へと歩いて行った。