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その瞬間、彼の手が純花の左手首をつかんだ。
純花はいきなり手を掴まれ、それ以上動けなくなってしまった。
俯いていた顔を上げ彼の顔を見る。
依然として純花の手首をつかんだままで、真剣な目で純花を見る彼。
「・・・中国に行っていた。」
「えっ?」
思いがけない彼の言葉に思わず聞き返してしまった。
「出張で中国に2週間行っていて、今日の昼ごろ日本に帰って来たんだ。」
「・・・そうなんですか。」
純花は、なぜ今彼がこんなことを言っているのかが分からなくて、なんとなく返事をした。
不思議そうな表情をしたまま彼の顔を見続けている純花を見て苦笑しながら彼は言った。
「申し訳なさそうにしていたから。
話しかけてくれたことは嬉しかったんだ。ただ少し疲れていただけなんだ。
だからそんな反省するようなことは何もないよ。」